リフトアップの王様手術、フェイスリフト。
顔の横を切って、引っ張ることによってたるみを解消する手術になります。
糸リフトと違って皮膚に傷を残すからには“すぐたるみが戻った”、“何も変わらなかった”など失敗は避けたいもの。糸リフトよりも長い効果、良い効果を狙いたいところです。
そこで重要になってくるのが“SMAS”と呼ばれるものです。
SMASとは?
皮膚の下、皮下脂肪の一つ下にSMASというものはあります。
正式名称はSuperficial Musculoaponeurotic System。
簡単に説明すると皮下脂肪にもう一枚、膜みたいなのがあります。これが重要なんですね。
さて、このSMASについてフェイスリフトの歴史を見てみましょう。
皮膚を切って引っ張るだけだとすぐに後戻りすることはフェイスリフトが誕生した1900年代前半ですでにわかっていました。
この後戻りに対抗するために、皮膚ではなくSMASというものを引っ張ると効果が長続きする!とSMASの概念が提唱されたのが1970年代。
そこから色々なフェイスリフトが開発され、現在に至る。となっています。
現在主流の考えでは、“SMASを触らないフェイスリフトはありえない”といっても過言ではありません。
SMASを触らないフェイスリフトはかなりの高確率で失敗します。
しかしながら、意外にも皮膚だけ切ってフェイスリフトしているクリニックも多くあります。
特徴としては手術が短時間で終わること。きちんとSMAS処理していたら2-3時間では終わりません。まして1時間なんてそんなそんな。
手術時間が短いので、患者さんの回転率はよくクリニック側は大儲け、ですが後戻りは早いです。
色々な考えがありますが、私はこのタイプの手術を全くを持っていい手術だとは思いません。クリニックのための手術だと思っています。
少し話がそれましたが“SMAS”に話を戻しましょう。
先ほどSMASが重要であるという話をしましたが、実は少し前に形成外科分野で世界最高権威の論文雑誌に“SMASなんてないさ!”という趣旨の論文が掲載されました。
SMASなんてない!?
今でいうX、旧twitterで少し騒がれていましたね。
皮膚しかいじらないフェイスリフトで大儲けしているクリニックが大喜びで反論に使ってきそうな論文です。
おい、佐々木、SMASが重要といっておきながらSMASなんてないじゃないか💢というツッコミも飛んできそうですが落ち着いてください。
この論文、きちんと読むとわかりますが、“解剖学的にSMASは存在しないが、手術学的にはSMASは存在する”という趣旨の論文になります。
頭がこんがらがりそうなので解説すると、「この膜がSMASだ!」というものはないですが、「手術操作によって繊維や脂肪、靭帯、筋肉などをまとめて形づくるものがSMAS」となります。
つまり、“SMASはある”のです。そして、この手術操作によって作るSMASが重要であることは、先ほど書いた通り、長い歴史で証明されてしまっているのです。過去の失敗が現在に生きています。
SMASはある!フェイスリフトにSMASは不可欠!
この論文が出たところで結論は変わらず、“現在フェイスリフトにおいてSMASを触らないフェイスリフトはありえない”です。失敗のもと。NO SMAS, NO FACELIFT。
さて、今回はフェイスリフトを受ける時に知っていただきたい“SMAS”について説明しました。
次回はもう少し踏み込んで“靭帯”について解説したいと思います。
こうご期待。